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機械式ショベルから油圧ショベルへ |
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1947年、世界初の油圧ショベルが誕生した。(イタリア ブルネリ社)それまでの機械式ショベル(ウィンチとワイヤ、歯車伝動により駆動)に対して、著しく操作が簡単な油圧ショベルの時代の幕開けとなった。
その後1950年代には、油圧ショベルの快適な操作性が認められ、欧米で多くの建機メーカが油圧ショベルに参入した。 |
(世界初の油圧ショベル(ブルネリ社製)) |
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日本での油圧ショベルの国産化の始まり 1 |
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1960年代に入り、欧米の先進メーカとの技術提携や独自の国産技術開発により、国産の油圧ショベルが次々に開発された。国産の1号機はフランスのシカム社との技術提携による新三菱重工業の「Y35」であった。(質量8.3t, バケット容量 0.25m3, エンジン 36PS, 油圧 9.5MPa, 流量120L/min, ギアポンプによる1ポンプ1バルブシステム) |
(国産初の油圧ショベル Y35) |
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日本での油圧ショベルの国産化の始まり 2 |
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さらに、1965年には純国産技術による最初の油圧ショベルUH03 が日立製作所(現 日立建機)から発売された。(質量9.4t, バケット容量 0.35m3, エンジン 58PS, 油圧 14MPa, 流量 104×2L/min, ギアポンプによる2ポンプ2バルブシステム)新開発の2ポンプ2バルブシステムは性能、操作性に優れ、欧米からの技術提携モデルを凌駕するものであった。 |
(純国産技術による初の油圧ショベル UH03) |
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国産ショベルの成長期 |
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1960年代後半から1970年代へかけて、日本の油圧ショベルメーカは市場ニーズに合わせて技術改良を進め、油圧ショベル技術開発の中心として世界をリードする立場となり、1970年代の終わりには、欧米メーカとの技術提携は解消されていった。国産ショベルの台頭は、高度成長期の日本のインフラ整備に広く活用されに大きく寄与した。また、1970代には国産各社のシリーズ化も進み、質量6t未満のミニショベルから、質量が100tを超える大型の油圧ショベルまでラインアップされた。
写真は1979年に発売された日立建機製のuh50(質量157t, バケット容量:ローダ 8.4m3, バックホウ 5.0m3)である。 |
(UH50) |
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油圧システムの進化 |
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1つのエンジンで6つのアクチュエータ(ブーム、アーム、バケット、旋回、走行右・左)を油圧で駆動させるための油圧システムは、燃費低減と操作性向上のために進化してきた。これらのシステム開発によって、日本は世界の油圧ショベル開発のリーダ的存在となっている。下表に代表的な進化の変遷を示す。 |
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発表年 |
システム・制御技術 |
特徴 |
1961 |
固定容量1ポンプ
1バルブ |
1台の固定容量ポンプと1台の制御バルブ同時に複数操作時の相互干渉が大きい |
1965 |
固定容量2ポンプ
2バルブ |
2台の固定容量ポンプと2台の制御弁複合操作性を格段に改善 |
1968 |
可変容量2ポンプ
2バルブ |
馬力制御によりエンジン馬力有効活用 |
外部コンペン |
非操作時のエネルギー損失を大幅低減 |
1983 |
オープンセンタシステム
(パラレル・タンデム組合せ) |
パラレル・タンデム 回路組合せ,2ポンプ合流回路などの採用により、さらなる複合操作性の向上 |
1984 |
電子制御オープンセンタシステム |
コンピュータによる馬力制御、外部コンペン制御、リリーフカットオフ制御 |
リリーフカットオフ |
リリーフ流量損失のカット |
スピードセンシング |
馬力制御の高精度化 |
1985 |
エンジン-ポンプ連携制御システム |
エンジンとポンプとの連携制御作業モード選択、オートアイドルによる損失低減、低騒音 |
1990 |
電子制御ロードセンシングシステム |
電子制御ロードセンシングシステム負荷に依らず操作通りの流量を保つ |
2006 |
掘削再生回路 |
ブーム戻り流量をアーム掘削に利用し、掘削の速度を向上する |
2010 |
ハイブリッドシステム |
旋回減速時の制動エネルギを電気エネルギに変換して蓄え、必要な時に再生する |
2011 |
3ポンプ3バルブシステム |
3ポンプ化により複合操作性とエネルギ損失の低減 |
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油圧の高圧化の推移 |
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油圧の圧力を高圧化することで動力密度があがり、機器の小型化や小流量化による損失低減が可能となる。 国産油圧ショベルは1961年に9.5MPaからスタートしたが、現在では4倍の38MPaに達している。下図の油圧力の推移を示す。 |
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【日本工業出版刊 岡部信也著「油圧ショベル大 全」より引用・加筆】 |
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