環境や安全などの視座から，水圧の実用化に対する期待は一段と高まっている．一方で，その開発や普及は道半ばと云えよう．本講では，水圧システムの美点や価値ならびに水圧技術の現状や課題について，潤滑（トライボロジー）および流れ（キャビテーション）に軸足を置きつつ，支配する物理的現象や関連する基礎的事柄について概観する．

自己潤滑性を有するポリエチレン樹脂をシール材料として用いた水圧シリンダ（定格圧力14 MPa）の耐久性や摩擦特性（摩擦力としゅう動速度の関係など）に及ぼすしゅう動面の表面粗さ，シール締め代，作動圧力，水温の影響について調査した結果について説明します．講演内容は，会誌50巻3号に掲載されている同一題目の解説記事にデータを追加したものとなりますので，同記事を参考にしてください．

放射線環境下での使用を想定して開発中の2種類の水圧モータについて現状を報告する．1つめはラジアルピストン型で，4本のピストンの往復運動をカム機構によって回転運動に変換している．シリンダに給排水を行う分配弁の摩擦損失トルク及び内部漏れ流量の低減が課題である．2つめは小型化のためにロータリーピストン形式を採用した．低水圧での連続回転を実現したが，性能向上のための課題について報告する．

東北特殊鋼㈱の電磁ステンレス（ＫＭ鋼）は空圧／水圧／腐食ガス環境下など様々な状況で流体を制御する電磁弁の可動及び固定鉄心として利用されている。本講演では水圧を中心とした磁性材料に求められる各種特性や具体的用途事例について紹介しつつ、今後電磁ステンレスの活用が期待できる新エネルギー環境下の課題を紹介する。